カリフォルニア工科大学での留学体験:Junさんのインタビュー
カリフォルニア工科大学(CalTech)は、アメリカ・カリフォルニア州に位置し、世界トップクラスの理系教育と研究で知られる名門大学です。特に数学、物理、エンジニアリングなどの分野において、革新的な研究と成果を生み出しており、ノーベル賞受賞者も多数輩出しています。その小規模ながらも高度に専門化された学びの環境は、学生一人ひとりが教授から直接サポートを受ける機会を最大限に生かし、自分の可能性を広げる場所として注目されています。 今回のインタビューでは、CalTechで数学を専攻し、充実した研究生活を送るJunさんにお話を伺いました。出願プロセスやキャンパスでの生活、教授との密な関わり、そして世界でも類を見ない研究環境について、彼の体験を通じて詳しくご紹介します。理系分野を目指す学生にとって、CalTechがどのような可能性を提供する場所であるのか、ぜひこの記事を参考にしてみてください!
- 2024/12/3
- 2024/12/3
Junさん
California Institute of Technology
専攻: 数学(BS Mathematics)
- #正規留学生
- #2022年入学
- #理系
- #アメリカ
カリフォルニア工科大学入学前のJunさんの経歴について教えてください。
僕は大学に進学するまでずっと日本で過ごしてきました。小学校は日本の公立校に通い、その後、中高一貫の進学校に進学しました。小さい頃から数学や科学に興味があり、小学生の頃から化学コンテストに参加するなどしていました。
中学3年生の時には、アメリカで1週間の研修プログラムに参加し、ボストンのハーバード大学とMITを訪問しました。この経験で海外の大学に憧れを抱くようになり、本格的に進学を考えるようになりました。中高を通じて理系全般に深い興味を持ち、地学のJPGUという学会の高校生向けプログラムや、個人でのコンピューターサイエンス系のプロジェクトにも積極的に取り組んでいました。大学でも理系分野を研究をしたいと思い、海外で理系の科目に力を入れている大学を中心に大学選びを進めました。
Junさんはなぜアメリカ・カリフォルニア工科大学を進学先として選ばれたのですか?
実は、最初の第一志望はスタンフォード大学でしたが、残念ながら不合格でした。合格をもらった中でCalTechも候補に入っていましたが、最後まで迷ったのはアイビーリーグ校のCornellなど。ネームバリューは大事ですが、それ以上に自分がやりたい研究を深く追求できる環境を重視しました。
最終的にCalTechに決めたのは、合格後に教授から直接連絡をいただき、『ここに来たらこんな研究ができる』と熱心に勧めてもらったことが大きかったです。自分が本当に取り組みたい研究テーマがCalTechで実現できると感じたのが決め手になりました。
カリフォルニア工科大学に出願する上での、具体的なプロセスについて教えてください。
出願プロセス自体はシンプルで、Common Appを通じて必要な書類を提出しました。TOEFLのスコアは必須で、中学3年から高校3年までの成績を英語に訳したものと推薦状を3通用意しました。僕の代ではコロナ禍の影響でSATが必須ではなかったのですが、今はまた変わっているかもしれないので、最新情報は確認が必要です。
エッセイは全部で3〜4つほど書きました。Common App用に1つ、CalTech用のSupplementalエッセイも2つあって、エッセイのテーマは自由度が高く、自分の熱中してきたことについてなど、短めの設問で広げやすい内容でした。出願したのは高校3年の1月で、僕は日本の大学の受験も併願していたためかなり忙しい時期でしたが、何とか間に合わせました。
カリフォルニア工科大学の校風について教えてください。
CalTechは、パーティー好きな学生が多いというよりも、地味で真面目な学生が多い印象です。寮によってはアスリートが多くて飲み会が盛んなところもあるけど、基本的には住むコミュニティによって雰囲気が変わります。
勉強したいと思った時に一緒に取り組んでくれる仲間もたくさんいて、研究に熱心な学生が多いです。学部生のうちから研究を活発に行う人が多く、大学院進学を目指している学生が多いですね。政治的な雰囲気もリベラルで、自由な空気が流れていると感じます。
実際にカリフォルニア工科大学に行ってみて良かったと感じる点を教えてください。
CalTechの学部生は1000人程度と小規模で、学生一人ひとりが教授から手厚いサポートを受けられる点がすごく良いと感じています。特に、教授とのメンタリングが充実していて、高名な教授がメンターについてくれたことで、僕自身も進路を大きく変えました。僕は元々コンピューターサイエンスを専攻しようと思っていたんですが、教授から『君は数学の方が向いている』とアドバイスをもらい、それがきっかけで専攻を数学に転向しました。今となっては、このアドバイスのおかげで充実した研究をできているので、本当に感謝ですね。
また、CalTechは研究サポートも非常に手厚いです。特に理論研究は他大学では学部生にとって敷居が高い分野ですが、CalTechでは教授がマンツーマンで指導してくれて、興味を持った分野の研究をどのように実践するか親身に相談に乗ってくれます。学部生の段階からここまで深く研究に関わらせてもらえる環境は、他ではなかなかないと思います。
逆に、悪かった点、もっとこうだったらよかったと思う点はありますか?
CalTechの小規模な環境には良い面も悪い面もありますが、特に感じたのは、同じ学年に200人ほどしかいないため、同じ顔ぶれと常に一緒にいることです。最初はそれが魅力に思えたものの、実際に過ごしてみると自分の性格には合わない部分もあって、クローズドなコミュニティが少し窮屈に感じることもありました。
また、少人数ゆえに交友関係が固定化されやすく、広い意味での刺激が少ないと感じることもあります。この環境が合わないと感じる学生にとっては、ちょっとした居心地の悪さを感じることがあるかもしれません。
カリフォルニア工科大学の授業のスタイルについて教えてください
CalTechの授業は、1年目はコアカリキュラムとして数学、物理、化学、生物学が必修で、全員が同じ授業を受けます。学年全体で200人ちょっとの規模で受講するため、クラスメイト全員と顔見知りになるような環境です。2年目以降は専攻に特化した授業が増えていき、僕の専攻である数学は10〜20人の小規模な講義が主流です。コンピューターサイエンスは人気が高く、学年の半数、約100人ほどが受講しています。
数学の授業は一般的に講義形式で、教授が理論や証明について一方的に教えるスタイルが多いですが、教授によってはディスカッションベースの授業もあります。内容が高度で、レクチャーだけでは追いつけないことも多いので、教授のオフィスアワーを利用して、直接質問しに行くことが多いです。CalTechではこのオフィスアワーが充実していて、教授から個別にアドバイスをもらえるのもありがたいですね。
キャンパスや大学の施設の雰囲気はいかがですか?
CalTechのキャンパスはコンパクトなサイズなので、授業間の移動がとても楽です。全体的にモダンな建物が多く、古い建物は少なめで、現在も新しい施設が建設中です。そのため、どこか新しい雰囲気を常に感じられるところが良いですね。
ただ、小規模な大学ならではの制限もあり、勉強スペースの選択肢は多くありません。人数分のスペースはしっかりと確保されているものの、気分転換に別の場所へ移動するという自由度は少し限られています。
大学外での生活環境はいかがですか?
CalTechではほぼ全員がキャンパス内の寮で4年間過ごします。寮のシステムが柔軟で、1年目から住む寮を選べるうえに、ルームメイトも自分で選べるので、自分に合った環境を選べるのがありがたいですね。前年と同じ部屋に住みたい場合も優先されるなど、きめ細やかな配慮があります。
寮には、綺麗で落ち着いた寮と、少し古いけれど和気藹々とした雰囲気の寮の2タイプがあり、僕も住んでいる後者のほうが人気です。キャンパス内で生活のすべてが基本的に完結するため、日常的に外に出る機会はあまりありませんが、周辺は高級住宅街で治安が良く、安心して生活できる環境です。
在学中に印象に残ってるイベントはありますか?
CalTechで特に印象に残っているのは、“Ditch Day”という伝統的なイベントです。この日は卒業を控えた4年生が下級生にいたずらを仕掛ける日で、4年生が考えたさまざまなミッションが下級生に与えられます。下級生がそのミッションをクリアすると、4年生と会えて、一緒に思い出作りをすることができる仕組みです。学校全体が一体となって4年生を送り出すイベントで、みんなでわいわい楽しみながら参加するので、特別な思い出になりますね。
こうした伝統行事があると、キャンパス内での交流が深まり、在学中の一大イベントとして毎年楽しみにされています。
入学前、準備しておいてよかったこと、または準備しておくべきだったことはありますか?
CalTechでは入学後にPlacement Testがあり、これをパスすると一部の授業をスキップできる仕組みです。振り返ってみると、高校時代に大学数学を少し先取りしておけば、テストをパスして単調なCore Mathsの授業をスキップできたかもしれないと思います。事前に準備しておけば、学びたい分野により集中できるので、これから受験する方にはおすすめですね。
大学での日本人コミュニティについて教えてください。
CalTechの日本出身の学生は、僕を含めて全校で2人しかいません。日系アメリカ人や現地育ちの学生は他にも数人います。
卒業後の進路について教えてください
海外の大学院に進んで、より深いレベルで数学の研究をできたらと思っています。
最後に、これから留学を志す中高生の方々にメッセージ・アドバイスをお願いします!
アメリカの大学には、勉強したいと思ったらとことん深掘りさせてくれる環境が整っています。留学を考えている方には、まず自分が何のために留学したいのかをしっかりと考えて、そのモチベーションを持ち続けることが大切だと思います。目的意識があれば、留学生活も充実したものになりますし、多少の壁も乗り越えられるはずです!ぜひその意欲を大切にして、チャレンジしてみてください!