英・ケンブリッジ大学の留学体験談:R.I.さんが語るケンブリッジ大学のリアル
800年以上の歴史を持つ世界的な名門大学ケンブリッジ大学は、イギリスのケンブリッジに位置し、リベラルアーツから自然科学まで多岐にわたる分野で優れた教育を提供しています。小学4年生でイギリスに引っ越し、そこから現地校に通い英国大学に進学したR.I.さんは、美しいカレッジと歴史的建物に囲まれたキャンパスで学問に没頭し、国際的な仲間との交流を深めています。今回はそんな彼女の大学生活について、深く掘り下げていきます。
- 2024/11/5
- 2024/11/5
R.I.さん
University of Cambridge
専攻: 数学トリポス(Mathematics Tripos)
- #正規留学
- #2023年入学
- #理系
- #イギリス
ケンブリッジ大学入学前のR.I.さんの経歴について教えてください。
生まれは日本で、9年間日本で育ちましたが、小学4年生の時に両親の仕事の関係でロンドンに引っ越しました。そこから現地校に通い、GCSEやA-levelを受け、そのまま大学受験をしました。中学(Secondary School)と高校(6th Form)は、同じ現地の公立学校(State School)に通っていました。
R.I.さんはなぜイギリス・ケンブリッジ大学を進学先として選ばれたのですか?
イギリスの大学を選んだ理由は、まず、自分にとって馴染みのある環境だったことが大きいです。それに加えて、日本の大学を受験する場合、A-levelの結果が8月に出てから、冬の受験までに半年ほど空白期間ができてしまうことが気になっていました。また、周りの友人の多くがイギリスの大学に進学する予定だったことも影響しましたが、もしどの大学にも合格しなかった場合には、日本の大学を受験することも視野に入れていました。
University of Cambridgeを受験したのは、まず国内で数学のレベルが最も高かったからです。UCASを通して出願しましたが、Oxbridge(University of OxfordとUniversity of Cambridge)やMedicineの学部はEarly Applicationという仕組みがあり、締め切りが他の大学より早かったので、ある意味、試しに受験してみようという感覚で挑戦しました。
Oxfordを受験する際には「MAT」という数学の入学試験を受ける必要があり、この試験は面接の前に行われるため、時期が早いです。一方で、Cambridgeの「STEP」はA-levelと同じ6月に行われるので、志望理由書(Personal Statement)や予想成績(Predicted Grades)によって面接に進めるかが決まるため、面接に進める学生の数がCambridgeの方が多いという点が有利でした。
またOxfordの選考では「MAT」に加え、面接を通して口頭での説明力が問われる印象を受けました。一方、Cambridgeの選考では「STEP」を通じて文章での説明力が重視されるようで、英語が母国語でない私にとってはCambridgeのプロセスの方が自分に合っていると感じました。
ただ、今振り返ると、受験する際にカレッジや学部についてもっと丁寧にリサーチをして、自分が本当にその大学で学びたいかどうかをよく考えた上で、受験を決めるべきだったかもしれないとも思います。
ケンブリッジ大学に出願する上での、具体的なプロセスについて教えてください。
数学の学部に進むと決めたのは、Year 13(最終学年)の9月頃でした。校内での志望理由書(Personal Statement)の提出締め切りが9月末に設定されており、正式なEarly Applicationの締め切りは10月中旬でしたが、実際に志望理由書を書き始めたのは9月の2週目でした。数学の学部では、どれだけ数学を実践的に扱えるかが重視されるため、文系学部ほど志望理由書の内容が見られるわけではないと思っていました。
志望理由書は予想成績(Predicted Grades)とともに、UCASを通して提出しました。その後、12月頃に面接の案内が届き、2週間後に面接が行われました。学部やカレッジによって多少の違いはありますが、基本的に面接は11月から12月にかけて実施されます。
1月末には、A-levelと「STEP」の試験で一定の成績を修めることを条件とした条件付き合格(Conditional Offer)の通知が届きました。そして、5月から6月頃に「STEP」を受け、8月の第2週目頃に正式な合格通知を受け取りました。
ケンブリッジ大学の校風について教えてください。
ケンブリッジは、街全体がまるで大学そのもののように感じられる場所です。外に出れば、どこもかしこも学生ばかりで、知り合いに出くわすこともしばしばです。大学自体は非常にアカデミックな環境で、特に試験期間中には、誰もが図書館にこもって勉強しているような雰囲気です。
University of Cambridgeの特徴的な点のひとつは、学生がカレッジに所属し、その中で生活する制度です。このカレッジでの生活を通じて、同じカレッジの仲間との絆が深まり、まるで家族のようなコミュニティが築かれます。また、カレッジ内で他の学生との交流が自然に生まれる環境があり、友人関係を育む場としてもとても整っています。
実際にケンブリッジ大学に行ってみて良かったと感じる点を教えてください。
University of Cambridgeでは、Supervisionという独特の授業形式が採用されており、これは先生1人に対して生徒が2〜3人という少人数制で構成されています。週に2回、各1時間の授業があり、事前に課題が出されます。この課題を通じて、わからなかった問題や間違えた点について詳しく質問できる機会が設けられているのです。Supervisionのおかげで、質問しやすい環境が整っているのがとても助かります。
私の学部では、事前にSupervisionで出された課題を基に授業が進行しますが、文系の学部ではディスカッションを行ったり、エッセイを事前に添削してもらい、その改善点を指摘してもらうなど、さまざまなアプローチが取られています。また、数学やComputer Scienceの学部では、オンラインで公開されている課題を解いてきて、時間が余った場合には過去問に取り組むスタイルが採用されています。
さらに、さまざまなサークルやコミュニティに参加することもでき、アカデミックな環境での課題は多く、レベルも高いですが、リラックスできる時間もしっかり確保されています。
カレッジ生活を通じて友人ができるのも大きな魅力の一つです。各カレッジでは「Formal Dinner」と呼ばれる晩餐会が週に2〜3回開催されます。参加には費用がかかるため、任意ですが、友人の誕生日を祝うために一緒に参加することもあります。入学時には「Matriculation」という名の入学式に参加し、この時のディナーは特に豪華です。また、Christmas FormalやHalloween Formalなどの特別なイベントの際には、通常よりも値段は高くなりますが、さらに豪華な「Formal Dinner」を楽しむことができます。
逆に、悪かった点、もっとこうだったらよかったと思う点はありますか?
生活環境についてお話しすると、私が通っているカレッジは非常に古くて、2026年には700周年を迎える、ケンブリッジで2番目に古いカレッジなんです。そのため、キッチンは小さくて、設備もあまり充実していません。「gyp room」と呼ばれるほどで、基本的にはカレッジ側は生徒に食堂で食事をすることを想定しているようです。トースター、電子レンジ、ケトルは揃っているものの、オーブンや冷凍庫はないので、これらの設備は出願する前にしっかり確認しておくことをお勧めします。
ケンブリッジ大学の授業のスタイルについて教えてください。
私の学部では、月曜日から土曜日まで、毎日2〜3時間の講義(レクチャー)が行われています。1学期につき、1年生の時は4つの科目を履修し、2年生になると5つの科目に増えます。2年生では、授業時間が24時間分の科目もあれば12時間分の科目もあり、バラバラなスケジュールとなっています。レクチャー以外の授業はすべてSupervision形式で行われ、自習をしっかり頑張る必要があります。
学期は8週間で、土曜日にも授業がある学部も存在します。たとえば、Natural Scienceの学部では、週に2,3回で5-6時間ほどのLab(研究や実験を行う授業)が設けられていることもあります。また、Englishの学部では、1週間に1時間のオプショナルレクチャーがあり、そのレクチャーに参加しない学生はその分、本を読んだりします。エッセイを書くために1日で3冊読まなければならないときもあるようです。
キャンパスや大学の施設の雰囲気はいかがですか?
キャンパスには大学のスポーツセンターとして「University Gym」があり、年間費が必要です。しかし、各カレッジにも小さなジムがあり、こちらは無料で利用できるのが魅力的です。
Cambridgeでは、講義室はキャンパス内のさまざまな場所に点在しており、各学部に専用の建物があります。そのため、文系の学生は文系の学部建物で授業を受け、理系の学生もそれぞれの学部に通います。ただし、授業によっては受講生が多いために、専用の建物では収まりきらず、他学部の講義室を共用することも特に1、2年生の間はよくあります。また、Supervision(個別指導)は、カレッジ内で行われることもあれば、他のカレッジや大学の施設を使うこともあり、これはSupervisorの所属するカレッジにより変わってきます。
大学の図書館は非常に広く、各カレッジや学部にも独自の図書館がありますが、学生はカフェやさまざまな場所で勉強することも多いです。
大学外での生活環境はいかがですか?
学部生はカレッジ内の寮が保証されており、3年間同じカレッジに所属します。カレッジ外の住まいへの移動はなく、Supervisionも各カレッジごとに組織されています。受験時には基本的にカレッジに出願しますが、大学院生の中にはカレッジではなく学部に出願する人もいます。
また、街の治安は非常に良好で、学生街であるため、基本的に友達と一緒に行動することが多いからというのもありますが、道が暗くても不安を感じることはありません。
行っている課外活動はありますか?
大学ではJapan SocietyとK-Pop Societyの二つのサークルに所属しています。
今年の夏には日本でインターンを経験し、ロンドンキャリアフォーラムというヨーロッパ最大級の日英バイリンガルの学生向け就活イベントを通じて知った企業で選考を進めましたが、この企業は数学とは関係のないベンチャー企業でした。来年の夏も日本でのインターンを考えており、特にコンサルティング業界に興味を持っています。
また、アルバイトとして家庭教師も行っており、GCSEやA-levelの指導を日本人向けに、特に海外に来たての方々に提供しています。
在学中に印象に残ってるイベントはありますか?
Japan Societyのイベントは印象に残っていて、特に学年末に開催するSocial(交流会)がとても思い出深いです。このイベントでは、Committee(委員会)が用意した食事をみんなで食べながら、教会を貸し切って2〜3時間ほど過ごします。
また、テストが終わった時期には、各カレッジが行う「May Ball」があります。特にTrinity College、John’s College、Jesus Collegeの3つで行われるものは「三大May Ball」と呼ばれており、参加費は1人あたり200〜300ポンドほどします。これらの「May Ball」は、21時から6時まで開催される大きなイベントです。
入学前、準備しておいてよかったこと、または準備しておくべきだったことはありますか?
受験については、「MAT」や「STEP」のためにもう少ししっかり勉強しておけばよかったと感じています。大学に入ると、「MAT」のスコアについて尋ねられることもあり、もう少し良い点を取っていれば良かったと考えることがあります。
また、カレッジのリサーチについても、もう少ししておくべきだったと反省しています。特に、キッチンの設備や立地、雰囲気などをしっかりと調べておけばよかったと思います。カレッジによっては、洗濯機が無料で使えるところもありますので、そういった情報も事前に確認しておくと良いでしょう。例えば、Emmanuel Collegeにはクリーニングサービスがあり、衣服を洗ってくれたり、畳んでくれたりするのでとても便利です。
持ち物に関しては特に不自由を感じていませんが、日本の調味料や調理器具をもう少し買っておけばよかったと思っています。カレッジ内には食堂もありますが、結局自炊をしているので、そういったアイテムがあれば助かる場面が多いです。
大学での日本人コミュニティについて教えてください。
University of Cambridgeでは、ロンドンと比べると日本人の数が少ないのが現状で、1学年に10人いれば多い方です。さらに、高校まで日本にいた人は1学年に数人程度です。
大学内には日本に関係するサークルが3つあり、特にJapan Societyは交流を主な目的としています。Japan Forum Societyでは、日本の政治状況や時事問題についてディスカッションを行い、ゲストを招いてスピーチをしてもらう活動も行っています。また、院生向けのJapan Societyもあります。Japan Societyにおいては、サークルのメンバー構成は日本人とそれ以外の人がほぼ半々というイメージですが、Japan Forum Societyは日本人があまりいない印象です。
最後に、これから留学を志す中高生の方々にメッセージ・アドバイスをお願いします!
「自分がオックスブリッジなんて」って思って受験せずに後悔するよりも「ダメもとでとりあえず受けてみよう」で頑張った結果、受かることもあるのでなんでもとりあえずチャレンジしてみるのが大事だと思います。イギリスでは全体的に「頑張る子にはよりサポートを!」の風潮があるので、どんどん周りの人を巻き込んで自分のやりたいこと、なりたいものを目指して頑張ってください!