米・ジョージタウン大学の留学体験談:外交の中心で国際関係学を学ぶ
アメリカの首都ワシントンD.C.に位置するジョージタウン大学。政治学や国際関係学の分野で世界的に高い評価を誇るこの大学は、クリントン元大統領など、数々の政治家や外交官を輩出してきました。今回は、国際関係学を専攻するK.Nさんに、ジョージタウンでの生活や学びについて伺いました。彼の体験を通して、政治と学問が交差するこの魅力的なキャンパスの様子をご紹介します。
- 2024/12/3
- 2024/12/3
K.Nさん
Georgetown University
専攻: 国際関係学(International Affairs)
- #正規留学生
- #2021年入学
- #文系
- #アメリカ
ジョージタウン大学入学前のK.Nさんの経歴について教えてください。
僕は香港で生まれ、その後上海で育ちました。上海のアメリカンスクールで学んだ後、13歳の時に日本へ移り、東京のインターナショナルスクールに転校しました。高校卒業までそこで学びながら、自然と海外の大学を目指すようになりました。
K.Nさんはなぜアメリカ・ジョージタウン大学を進学先として選ばれたのですか?
実はもともとはビジネスを学ぶつもりでアメリカの大学には基本的にビジネス専攻で出願していたんです。そんな中、ジョージタウンだけは国際関係学で出願しました。選択肢を広げたかったのと、外交官を多く輩出している学校の学びに興味があったからです。
最終的にはUCバークレーのビジネス学部とジョージタウンで迷いましたが、バークレーは日本人学生が多く、ジョージタウンの方が自分の背景を活かして個性を発揮できると感じました。また、ビジネスの知識は就職後やMBAで学べるので、学生時代には国際関係のような専門的な分野に挑戦したいと思い、ジョージタウンを選びました。
ジョージタウン大学に出願する上での、具体的なプロセスについて教えてください。
ジョージタウンはアメリカの大学では珍しくCommon App(共通出願システム)ではなく、大学独自の出願プラットフォームを使います。エッセイの質問内容はCommon Appとほぼ同じで、他大学で使った回答を活用できました。僕の場合、大学全体向けのエッセイと、外交政策学部用のエッセイの2つを用意しました。具体的には、「関心のある国際問題は何か?」や「なぜジョージタウンを選んだのか?」といった質問に答える形式でした。
また、出願プロセスでは卒業生の面接官とのインタビューが1回ありました。コロナ禍だったのでオンラインで行われ、自分の志望動機やバックグラウンド、情熱について説明する良い機会となりました。インタビューの相手が2013年卒の若い女性だったのは驚きましたが、フランクな雰囲気で話しやすかったのを覚えています。
ジョージタウン大学の校風について教えてください。
ジョージタウン大学の校風は、学部によってカラーがはっきり分かれるのが特徴です。特に政治学科の学生は慎重な人が多く、SNSや私生活の発言にも細心の注意を払っている印象です。政治家や国の諜報機関、政府関係の仕事を目指す人が多く、将来のキャリアパスがすでにガッチリ固まっている学生が目立ちます。そのため、バックグラウンドチェックに引っかからないよう、言動や行動を徹底的に管理している人もいます。
特に1〜2年生のうちから就職活動を始めている学生も多く、キャリア志向が非常に強いです。ビジネス系ではないものの、キャリア色が濃い雰囲気があり、国防省に関わる学生などは、自分の専門性に自信を持っている分、他の人を見下すような態度を取ることもあるようです。
全体的に、アメリカの官僚の世界を目指す学生たちが切磋琢磨する環境が感じられます。真剣さや熱意の一方で、その競争の激しさが独特の空気感を生み出している大学だと思います。
実際にジョージタウン大学に行ってみて良かったと感じる点を教えてください。
ジョージタウン大学で特に良かったと感じたのは、クラスが少人数で教授との距離が非常に近い点です。教授が学生一人ひとりをしっかり認識してくれるので、授業だけでなくインターンや就職のコネクションも紹介してもらえる機会が多いです。論文で悩んだときにも「この人に相談してみたら?」と的確なアドバイスをもらえるなど、サポートの手厚さに驚きました。
また、大規模な大学では一方的に話を聞くような授業が多い中で、ジョージタウンでは自主性を持って教授と接点を持ちながら学びを深められる環境が整っています。特に意欲的に学びたい人にとっては理想的な大学だと思います。
もう一つ意外だったのは、カトリック系の大学でありながら宗教色が強すぎない点です。無宗教の僕でもまったく違和感を感じることなく、自由な校風の中で快適に学べています。期待以上の経験ができていると実感しています。
逆に、悪かった点、もっとこうだったらよかったと思う点はありますか?
ジョージタウン大学で大変だと感じた点の一つは、周りの学生のキャリア志向が非常に強いことです。特に就職活動が活発になる時期には、他の学生と自分を比較して焦ることもあります。コンサルティングや投資などの分野に特化したコミュニティも多く、それが「選ばれた人たちのクラブ」といったエリート意識につながる場面もあるので、やや息苦しく感じることもあります。
生活面では、寮の抽選制度が課題です。1〜2年目は希望の寮に住めない場合が多く、新しい寮は上級生が優先される仕組みになっています。また、学食があまり美味しくないことも難点です。ジョージタウンでは1〜3年目の寮生活中は学食利用が半強制的なので、食事に関しては少し我慢が必要だと感じました。
ジョージタウン大学の授業のスタイルについて教えてください
ジョージタウン大学の授業は少人数制が基本で、教授との距離が近いのが特徴です。1年目は必修科目が多く、クラスの規模は60〜70人程度ですが、それでも大規模講義ほどの距離感はありません。さらに、講義とは別に15人ほどのディスカッションセッションが設けられ、講義内容を深掘りして議論する機会があります。
2年目以降はクラスの規模が20〜30人程度になり、4年目になると15人以下のセミナー形式が増えます。この段階になると、教授との距離はさらに近くなり、議論やフィードバックを通じて密な指導を受けることができます。
授業内容ではケーススタディが多く取り入れられており、過去の事例をもとに、背景にある歴史や哲学、法律といった様々な視点から分析を進めていきます。このような多角的なアプローチにより、学びが単なる知識の習得ではなく、問題解決力や批判的思考力を磨く場になっていると感じます。
ジョージタウン大学のキャンパスや施設の雰囲気はいかがですか?
ジョージタウン大学のキャンパスは、ワシントンD.C.の都心に位置するため、敷地はややコンパクトですね。キャンパス全体が塀で囲まれており、その中で全てが完結しているのは便利ですが、広々とした雰囲気を求める人には少し物足りないかもしれません。
施設については、新しい建物は非常に綺麗で快適ですが、古い建物も多く、講義室や寮に関しては当たり外れがあります。
また、敷地が小さい分、スポーツ施設などはUSCやミシガン大学などのマンモス校ほどの充実度はありません。例えば、アメフトのスタジアムも収容人数が1000人程度と比較的小規模です。
それでも、都心の便利な立地や、こじんまりとした環境の中で学生同士の距離が近い点は、このキャンパスならではの魅力だと思います。
ジョージタウン大学での生活環境はいかがですか?
ジョージタウン大学では、1〜3年目は寮生活が義務付けられています。寮によってもちろん環境は異なるんですが、基本的には便利で楽に暮らせますね。ワシントンD.C.は政府関連施設が多いため、一般的なマンションは少なく、家賃も非常に高いです。そのため、寮生活で比較的安価に住居費を抑えられるのは大きなメリットだと感じています。
キャンパス周辺の治安は良好です。政府機関が多く警備がしっかりしていることもあり、危険を感じることはほとんどありません。ただ、ジョージタウンとワシントンD.C.中心街を結ぶ電車やバスがないため、交通の便が少し不便です。学校運営のシャトルバスはありますが、夜遅くに出かける際はUberを利用する必要があります。
休日は、寮の友人たちとキャンパス内で過ごすことも多いですが、繁華街に出かけたり、D.C.内の観光スポットを訪れたりすることもあります。適度に都会の利便性を楽しみつつ、安心して生活できる環境が整っていると思います。
ジョージタウン大学で特に印象に残ってるイベントはありますか?
ジョージタウン大学では、イベントのゲストスピーカーとして来校するビッグネームの存在感は圧倒的ですね。一国の国王や国家主席クラスの要人が訪れることも珍しくなく、国務長官や各省の長官が授業に参加したり、特別講演を行ったりする機会もあります。ワシントンD.C.という立地と大学の国際的なネットワークが、このような機会を生み出していると感じます。
実際に、日本からも河野太郎さんが訪れたほか、岸田首相が来る予定だったこともありました。
ジョージタウン大学入学前、準備しておいてよかったこと、または準備しておくべきだったことはありますか?
ジョージタウン大学に入学する前に準備しておいて良かったと感じたことは、ソサエティ(学生団体)について早くから情報を集めていたことです。ジョージタウンのソサエティは競争が激しく、特に人気のある団体は選考が厳しいので、どんな団体があるかを事前に知っておくとスムーズに参加できます。入学後にバタバタしないよう、早めにリサーチしておくことをおすすめします。
ジョージタウン大学での日本人コミュニティについて教えてください。
ジョージタウン大学の学部生における日本人の数は非常に少なく、一学年に3人いれば多い方です。4学年を合わせても10〜15人程度なので、日本人学生同士で顔を知ることができるくらいの規模感です。その一方で、大学院生には日本の外務省からの派遣などで来ている人が多く、日本人の存在感が強く感じられる分野もあります。
大学内の「Japan Society」はありますが、日本人学生よりも日本文化に興味を持つローカルの学生が中心となっている、カルチャークラブ的な役割が強い印象です。そのため、日本人同士の密なコミュニティというよりは、国際的な交流を目的とした場として機能しています。
最後に、これから留学を志す中高生の方々にメッセージ・アドバイスをお願いします!
これから留学を目指す方には、日本のコミュニティともつながりを持ち続けることをおすすめします。海外での生活に集中するのも大切ですが、日本の学生がどんなことをしているのか知っておくと、将来の選択肢を広げる助けになります。
留学は新しい挑戦ですが、今までの環境を完全に切り離す必要はありません。日本と海外、両方に接点を持つことで、卒業後の進路も柔軟に考えられると思います。自分らしく楽しんでください!