中・復旦大学の留学体験談:環境問題への情熱を原動力に
復旦大学は、中国上海に位置するトップクラスの総合大学で、学問的卓越性と国際性を誇り、幅広い分野で優れた教育・研究を提供し、世界中から優秀な学生が集まる魅力的な学びの場です。Ayutaさんは中学生時に上海の環境問題に衝撃を受けた経験から、日中の協働による解決策を模索するようになり、高校時代には国際会議やシンポジウムに参加するなど積極的に学びを深めてきました。JSAの会長や戦略コンサルティングファームでのインターンを通じて、環境問題や経済発展に関する課題解決に向けた具体的なアプローチを実践し、国際的な視点と行動力を磨いています。今回は、そんな彼の留学生活についてお話を伺いました。
- 2025/1/16
- 2025/1/16

Ayutaさん
Fudan University
専攻: 経済学部国際経済学科(国际经济与贸易)
- #正規留学
- #中国
- #2022年入学
- #文系
復旦大学入学前の Ayutaさんの経歴について教えてください。
千葉県で生まれ育ち、14歳の時に父の仕事の都合で上海に引っ越しました。
最初の半年間は上海の日本人学校に通っていましたが、その後中学3年生の時に現地の学校に編入しました。その学校はインターナショナルスクールではありませんでしたが、国際色が強い学校で、英語と中国語の科目が半々でした。
そのまま現地の高校に進学しましたが、英語を勉強する時間が長かったり、物心がつく前から両親に連れられてよく旅行に行っていたことから、中国語より英語の方が得意になりました。
Ayutaさんはなぜ中国・復旦大学を進学先として選ばれたのですか?
中学生で上海に引っ越した時、一番衝撃を受けたのが現地の環境問題でした。
そこからその問題に対して自分にできることがあるのかを考えるようになり、高校生の時には日本の企業と協力して、中国の環境問題をどう解決できるかについてのシンポジウムや国際会議に傍聴者として参加したこともあります。中国が経済発展する中で、昔の日本と重なる部分があると感じることがありました。過去の環境破壊を乗り越えた日本企業の経験や知識が中国企業に活用できると考えました。両者の協働を実現する上で、まずは中国における環境破壊の原因となっている中国の経済活動について学びたいと考え、中国の大学に進学しました。
そして大学でその分野をもっと深く学びたかったので、関連する学部を専攻として選びました。復旦大学には日本と中国の環境問題に精通している教授もいましたし、グローバルガバナンスに関するイベントも充実していて、そのような点に非常に興味を持ち出願しました。
復旦大学に出願する上での、具体的なプロセスについて教えてください。
僕は高校から直接、日本の高校でいうところの「推薦」のような形で大学に入学しました。入学の際には、高校の成績とTOEFL、HSKのスコア、それから大学の教授との面接がありました。僕が通っていた学校の場合は、11月〜12月頃に応募が始まり、1月下旬に合否結果が発表されます。
通常であれば、出願は毎年10月~翌年1月ごろに始まり(一部の大学では9月から受付を開始することもあります)、翌年3月~6月まで出願を受け付けています。
また高校の成績やTOEFL、HSKのスコアに加えて、大学ごとの入学試験があり、その後に面接が何回か行われることが多いです。
復旦大学の校風について教えてください:
復旦大学は、中国の大学の中ではバランスの取れた大学だと感じます。中国に留学する日本人は中国のトップ大学に行く人が多いですが、トップ大学は学部数が理系学部に偏っているところが多いです。しかし僕の大学は総合大学で、文系と理系のコース合わせて35コースもある、いわゆるマンモス校です。分野的にバランスが取れていると感じています。
上海の街自体も多様性があり、バランスの取れた街です。経済の中心でもあるので、人々の考え方が多様で寛容だと思います。
実際に復旦大学に行ってみて良かったと感じる点を教えてください。
復旦大学に実際通ってみて良かったと感じる点は、まずは周りの学生がとにかく優秀なことです。ご存じの方も多いかとは思いますが中国は受験大国で、小学生の頃やそれ以前から勉強をしてきた、競争を勝ち抜いてきた人が大学には集まっています。そのため、学力は世界トップレベルです。そういった学生たちと一緒に勉強していると、インプットやアウトプットの強さなど、多くのことを吸収でき、刺激を受けることができます。
もう一つ魅力的な点としては、学食はすごく安いことです。中華であれば1食が200円だったりします。基本的には中華料理が中心ですが、日本食や韓国料理、ハンバーガーなど、様々な料理が提供されています。
逆に、悪かった点、もっとこうだったらよかったと思う点はありますか?
一つ挙げるとしたら、知識集約型の授業が多いことですね。教授から一方的に聴くだけの授業が多く、インタラクティブな授業は少ない印象があります。ただここ最近では中国内でもインタラクティブな授業をしていこうという流れがあるようなので、今後に期待しています。
復旦大学の授業のスタイルについて教えてください
授業は基本的に、教授の講義を一方的に聴くレクチャーベースです。規模感でいうと30〜90人の授業が多いです。授業によっては、中間テストとして5〜6人で行うグループプロジェクトが課題として与えられ、30〜90人の前で発表を行うこともあります。これだけ大人数の前で発表をする機会があるのは人口が多いことも影響しているかもしれません。
キャンパスや大学の施設の雰囲気はいかがですか?
キャンパス内には基本的になんでもあります。ジムもプールもありますし、図書館もたくさんあれば、カフェもあります。設備自体はあまり他の大学と変わりませんが、人口が過密しているのでどこも人が多いです。図書館もジムも常に賑わっています。ただどこも空席がないので、図書館などで席を見つけるのも一苦労です。
また大学内には大きい校庭があり、サークルがパフォーマンスをすることもあります。この校庭は一種の街の公園のようなもので、他の大学内の施設も街の方が使うことのできる環境です。
大学外での生活環境はいかがですか?
僕は、抽選があり学生寮には入れなかったので、1年目からキャンパス外に住んでいます。
家から大学までスクーターで20分ほどの距離ですが、これは中国大学の学生の中では遠い方で、学生寮に住んでいる場合は授業に向かうのが圧倒的に楽です。中国の大学ではみんな寮に入れられて、基本的には寮で生活しています。卒業までキャンパス内で生活が完結している人がほとんどで、僕のように学外に住んでいる人は珍しいです。
また街の治安は日本とあまり変わりません。政府の統制が厳しいからこそ危ない人も少なく、中国内に住んでいる人からすると安心感があります。監視カメラがたくさんあり統制されていることで有名ですが、実際住んでみると監視されている感覚はありません。
行っている課外活動はありますか?
JSA(Japanese Student Association)の活動には参加していて、2年生の時には会長をしていました。
また上海の戦略コンサルティングファームでインターンをしており、日本企業が中国進出する際のコンサルや、中国企業が日本進出する際のコンサルを行っています。アナリストの仕事を任されており、情報収集や資料作成、さらに上司の秘書としてイベントに参加することもあります。最近では同会社の中で教育の事業を立ち上げ、具体的には日本の企業ともタッグを組んで、中国の日本人留学生を対象にした就活サポートサービスを提供しています。
在学中に印象に残ってるイベントはありますか?
印象に残っているイベントの一つとしてまず挙げられるのは、30カ国ほどからの人が集まる「国際文化祭」です。僕たちは日本を代表するいくつかの企業からスポンサーを受け、日本文化を紹介できるようなブースを作りました。射的ができるブースを設け、景品としてスポンサー企業の商品を贈呈していました。各国がブースを出して、それぞれの文化を展示し、特色あるものを景品として渡していました。これは「留学生オフィス」という留学生の管理全般を行っている大学の一部門に公認されている「学生会」(サークルのような存在)が主催しているイベントで、毎年学生主導で行われます。
また、1年生の時に出場した学部対抗のサッカー大会も印象的です。僕の専攻である経済学部のチームが優勝し、僕自身がMVPを取った大会です。これは毎年開催される任意参加のイベントで、35チーム(コースの数分)で行われます。1年生の時に参加したのでここで友達を作ることもできました。
入学前、準備しておいてよかったこと、または準備しておくべきだったことはありますか?
まずは中国留学自体ネット上で探すことのできる情報が少ないので、JSAのインスタグラムアカウントは役立ちました。そこで情報収集もできましたし、質問があってアカウントに連絡するとすぐに返事が返ってきました。
また大学に入ってからは、勉強をちゃんとしないといけません。知識詰め込み型の勉強が多く、図書館に夜までこもることは日常茶飯事なので、入学前からその覚悟は必要だと思います。
大学での日本人コミュニティについて教えてください。
日本人は学部生、大学院生、交換生、語学生合わせて200人ほどいます。その中で、日本人の集まる「JSA」のメンバーは毎年約10名ほどです。JSAは活動が非常に活発です。学部正規生、大学院生、交換留学生・語学留学生がそれぞれ同じくらいの人数で所属していて、「国際文化祭」などの大きなイベントにも日本を代表して参加をします。
最後に、これから留学を志す中高生の方々にメッセージ・アドバイスをお願いします!
海外留学を考えているみなさんにとって、上海が選択肢にある人は少ないと思います。特に、中国経済が停滞する中、中国留学の魅力が薄れているようにも感じます。しかし、将来の自分の市場価値を高めるうえで、良くも悪くも中国の国際社会に対する影響力が高まっているからこそ、中国の視点で物事が考えられる人材が重要になると考えています。
中国がイケイケだった一昔前とは異なり、これからは日本企業としてきちんとした戦略のもと、中国企業ないしは中国政府と関わっていく必要があります。その時に、中国がどのような国で、次にどのようなことをして行きたいのか、その点が分っている人は、どの業界で働くにせよ、社会が求める貴重なインサイトが出せる人材になり得ると考えています。
そんな時代だからこそ、みなさんにはぜひ中国留学を検討して頂きたいです!