シンガポール国立大学(NUS)の留学体験談:アジアで学ぶビジネスと多国籍なネットワーク
シンガポール国立大学(National University of Singapore, NUS)は、THE世界ランキングでもTOP10に位置する、アジアで最も評価の高い大学のひとつで、多様な国際的なネットワークを誇ります。今回のインタビューでは、マーケティングを専攻するA.M.さんに、NUSでの学生生活や大学選びの背景について伺いました。彼女の視点を通じて、NUSならではの魅力をお伝えします。
- 2024/10/18
- 2024/10/21
AMさん
National University of Singapore
専攻: 経営学・マーケティング(Business Administration, Marketing)
- #正規留学生
- #2021年入学
- #文系
- #シンガポール
NUS入学前のA.Mさんの経歴について教えてください。
小学校時代はアジアの日本人学校に通い、その後、都内の進学校に進学しました。ドメスティックな環境で、帰国子女も少なく、ほぼ唯一の帰国子女として、国際関係の活動に積極的に参加するようになりました。そんな中で、国際会議に出場するなどの経験を通じて、海外で学びたいという気持ちが強くなっていきました。そんな中、高校の時家族の仕事の関係でベトナムのインターナショナルスクールに転校、そこでIBプログラムを経験しました。当時は急に高校になって英語の環境になったので、言語の面で大変だったのを覚えています。
A.Mさんはなぜ国名・NUSを進学先として選ばれたのですか?
自分のバックグラウンドが東南アジアに根ざしていたこともあり、自然と東南アジアでの留学を考えるようになりました。将来的には東南アジアでビジネスをしたいという思いがあり、そのネットワークが集まるシンガポールに魅力を感じました。また、インターナショナルスクールでの経験から、欧米の大学の雰囲気が自分には合わないと感じていて、アジアの方が自分の性に合っていると思いました。大学選びの際には北京大学とも迷いましたが、最終的にはNUS一本で出願し、もし合格しなかったら日本の大学を考えようと思っていました。
NUSに出願する上での、具体的なプロセスについて教えてください。
出願はほぼIBや学校の成績をベースに行いました。エッセイは2000文字程度で短く、重要な要素ではなかったです。IBの最終試験前にPredicted Scoreを使って出願し、最終的にActual Scoreを提出したのですが、合格通知が届いたのは学期スタートの2週間前で、本当にギリギリでした。ただ、年々入試プロセスが変わっていて、最近は面接もあるようなので、その点は大学のウェブサイトで確認が必要です。
NUSの校風について教えてください:
学部によって違うとは思いますが、ビジネススクールに限って言うと、真面目でキャリア志向が強く、逆算思考がしっかりしている学生が多いと思います。ビジネススクールの学生は、少ない時間で効率よく成績を上げるように計画的に動く人が多い印象です。また、卒業後の目標をはっきりと持ち、そのためにインターンや教科を計画的に選んでいく学生も多く、1年目から4年目までで10個近くのインターンを経験する学生もいます。
また、NUSには、いわゆる”全ドリ”を目指す学生が多い印象です。勉強はもちろん、スポーツ、インターン、ソーシャル活動、ボランティアまで、全てをそつなくこなしていく姿勢が見られます。周囲の学生がこれだけ多方面に取り組んでいるので、自分も自然と高いモチベーションで日々の活動に取り組むことができます。最初はそのペースについていくのが大変でしたが、今ではそうした環境が自分を成長させてくれていると感じます。
実際にNUSに行ってみて良かったと感じる点を教えてください。
NUSに通っていて特に良かったと感じるのは、同じようなパッションを持った”同志”に出会える環境があることです。海外進学というと、アメリカやイギリスを思い浮かべる人が多い中、シンガポールに留学する学生はそれぞれユニークな理由やこだわりを持ってこの地を選んでいる人が多いです。周りの日本人学生も含めて、そんな仲間たちと一緒に学べるのはとても刺激的で良い経験になっています。
また、シンガポールならではの環境として、中国語と英語が混在するバランスも心地よく感じます。日常生活でも中国語を使わないといけない場面が多く、言語面での挑戦も自分を成長させてくれています。さらに、グループプロジェクトでのディスカッションを通じて、多国籍な学生たちのさまざまなマインドセットを吸収できるのも大きな魅力です。空気を読みながらも、積極的に意見を出し合うバランスが取れていて、とても学びの多い環境です。
逆に、悪かった点、もっとこうだったらよかったと思う点はありますか?
実際にNUSに通ってみて、思っていたよりシンガポール人の学生が多く、多国籍な環境というよりもローカルな雰囲気が強いと感じました。もちろん留学生もいますが、想像していたほどインターナショナルな感じではなかったですね。
また、ハウジングに関してはかなり大変でした。シンガポールの大学は全体的に、ローカルの学生が優先される仕組みになっていて、外国人は寮に住むことが義務付けられる一方で、ローカルの学生が優遇されることが多いです。そのため、寮を確保するのに苦労する留学生も多いです。
あと、アジアの大学では奨学金が外国人には適用されないケースも多く、経済面でも事前にしっかり調べておく必要があると思います。欧米に比べると学費もその分やすいですが、日本の大学と比べるとそれでも高いので、そこら辺は念頭に置いてシンガポールへの留学を考えてください。
NUSの授業のスタイルについて教えてください
NUSのビジネススクールでは、授業スタイルがいくつかあり、特に特徴的なのが”セクショナル”と呼ばれるビジネス独特の授業形式です。これは、レクチャーとチュートリアルが合わさったような形式で、教授が話す時間が6割、学生のディスカッションが4割というバランスになっています。クラスの規模は40人程度で、常に学生が発言を求められるため、インタラクティブで活発な議論が展開されるのが特徴です。
また、ほぼすべての授業でグループプロジェクトが課題として出されるので、学生同士で協力しながら進める力が求められます。そうしたディスカッションやプロジェクトを通して、他の学生の意見を吸収し、自分の考えを発信する機会が多いのも、NUSの授業の魅力だと思います。
キャンパスや大学の施設の雰囲気はいかがですか?
NUSのキャンパスは施設がとても充実しています。至る所に勉強スペースがあって、どこでも気軽に作業ができる環境が整っています。ただ、試験シーズンになるとどのスペースも埋まってしまうことが多いですね。図書館も、本が少なく、ほとんどが勉強用のスペースとして利用されています。
さらに、キャンパス内にはジムやリクリエーションスペース、スポーツ施設なども整っていて、勉強だけでなくリフレッシュできる環境が整っているのも魅力です。
大学外での生活環境はいかがですか?
NUSでは、留学生は最初の2年間は寮生活が保証されていますが、3年目以降は自分で住まいを見つける必要があります。寮に残ることも可能ですが、そのためには成績や課外活動などの実績が考慮されて選抜が行われるので、残れるかどうかは熾烈な競争です。こうした仕組みは、ある意味で競争力が激しいNUSという大学の特徴を反映しているように感じます。
寮の施設自体は非常に充実していて、キャンパス内にあるので授業へのアクセスが良く、とても便利です。また、キャンパス内の物価は外と比べると安いので、食費や日常の出費を抑えられるのも助かります。シンガポール全体の物価は高いイメージがありますが、NUSの学食は1食500円ほどで、意外と安くて助かりますし、料理も美味しいです。全体的にキャンパス内で生活のほとんどが完結するので、非常に過ごしやすい環境だと感じています。
シンガポールの街は治安がとても良く、夜遅くに歩いていても安心感があります。週末には街に出て買い物をしたり食事を楽しんだりすることもできますが、キャンパス内での生活が快適なので、外に出る機会が少ない学生も多いかもしれません。
在学中に印象に残ってるイベントはありますか?
NUSに在学していて特に印象に残っているイベントの一つはキャリアフェアです。トップ企業がNUSに集まり、ブースを設けてHRの担当者と直接話せる機会がありました。個別の企業が頻繁にキャンパスを訪れ、フェアやセミナーを開催しているので、就職活動やインターンシップの機会を得るのにとても役立ちます。こうしたイベントが常に行われているため、キャリアに対する意識が自然と高まります。
もう一つ印象に残っているのは、学生団体が主催したイベントに現在のシンガポール首相、ローレンス・ウォン氏が来てキャンパスで講演を行ったことです。国を代表する国立大学ならではの貴重な機会で、実際に国のリーダーから直接話を聞けるというのは、とても刺激的な体験でした。
入学前、準備しておいてよかったこと、または準備しておくべきだったことはありますか?
基礎的な中国語が話せると、日常生活がかなり楽になると思います。ローカルなエリアでは特に中国語で話しかけられることが多いので、言語の基礎があると便利です。ただ、ディープなエリアに行かなければ基本英語だけでも生活は完結するので、そこまで気にしなくても良いかもしれません。
大学での日本人コミュニティについて教えてください。
NiSCというシンガポールのトップ3大学(NUS、SMU、NTU)の日本人学生が集まる学生団体があります。正規生が30人ほどで、3大学を合わせると毎年100人ほどの交換留学生も来ているので、日本人コミュニティは比較的充実しています。
最後に、これから留学を志す中高生の方々にメッセージ・アドバイスをお願いします!
これから海外留学を考えている方に、あえて現実的なアドバイスをお伝えすると、日本の大学ではできないからという理由だけで海外進学を選ぶのはおすすめしません。海外進学そのものに価値があるわけではなく、異国の地で学ぶからこそ得られる経験や学びがあるのだと思います。
日本がこうだから海外、という消極的な理由ではなく、自分が本当に学びたい分野がその国にある、というポジティブな原動力や理由があるなら、その道を積極的に目指してみると良いと思います。自分の情熱や興味を軸に、どの国や大学が自分に合っているのかをしっかり考えることが大切です。そうすれば、どんな困難も乗り越える力になるし、留学生活がより充実したものになるはずです!