米・ライス大学の留学体験談:多様性と実践的教育が育むKairiさんの挑戦
テキサス州ヒューストンに位置する全米トップクラスのリベラルアーツと研究を融合した私立大学、ライス大学。少人数制の授業と学生のサポートが手厚く、学内の多様性も大きな魅力で、各国から学生が集まっています。Kairiさんは、世界有数のメディカルセンターと提携しているライス大学で、スポーツ医学を通して実践的な教育を受けています。今回はその留学生活のリアルについて、Kairiさんに語っていただきました。
- 2024/11/2
- 2024/11/5
Kairiさん
Rice University
専攻: スポーツ医学&動物生理学・スポーツ分析・データサイエンス(Sports Medicine & Exercise Physiology and Sports Analytics, minor in Data Science)
- #正規生
- #2023年入学
- #理系
- #アメリカ
Rice大学入学前のKairiさんの経歴について教えてください。
東京で生まれ育ち、2歳からインターナショナルスクールの幼稚園に通い、その後小学校から高校まで同じインターナショナルスクールに通っていました。高校時代は特に合唱、ジャズバンド、そして陸上に力を入れて活動していました。高校卒業までは日本で過ごしていて、アメリカの大学に進学するために渡米したのが、僕にとって初めての海外生活でした。
KairiさんはなぜRice大学を選ばれたのですか?
スポーツ医学を学びたいと思っていたのですが、日本では英語でスポーツ医学を教える大学がなく、自然と海外の大学を視野に入れることになりました。その中でアメリカの大学に魅力を感じた理由のひとつが、NBAでのキャリアを目指していたことです。スポーツ医学の評判が高い大学を調べているうちに、特に目立ったのがRice Universityでした。
また、高校時代はクラスメートが58人と少人数だったこともあり、大学でも同じように比較的規模の小さい授業を希望していました。さらに、音楽が好きだったので、専攻とは関係なく高いレベルで音楽活動を続けられる環境を求めていて、音楽大学が併設されている点にも強く惹かれました。
加えて、新しい環境で学びたいという気持ちも強くありました。ずっと東京で過ごしていたので、少しでも広い世界に飛び出して、今までとは全く異なる場所で挑戦したいと思っていました。Rice Universityは高校からの進学者がほとんどいないこともあり、誰も知らない新しい環境で学ぶことに大きな期待を抱いていました。
Rice大学に出願する上での、具体的なプロセスについて教えてください。
Common Appを通じて出願し、SATとIBのスコアを提出しました。Common App用とRice Universityだけに提出する用など、合計で4つ書いたエッセイでは、高校2年生の時に卒業生を送る合唱の際、全員が輝ける環境を作り出せたという体験を基に、自分のスキルを活かして他人の可能性を広げられたことがやりがいに繋がったエピソードを書きました。この経験がスポーツ医学を学びたいという思いに繋がっています。元々、僕自身も陸上やバスケなどのスポーツをしていた時に、怪我にすごく悩まされたこともあり、怪我の予防にすごく興味があったというのがあります。第一線で活躍するアスリートが怪我のせいで競技ができなくなるのを見るのが何よりも辛かったので、少しでも自分の力でアスリートの怪我を減らせたら、より競技をする時間が増え、記録を破ったりする可能性が広がるなと思いました。他人の可能性を広げられることにやりがいを感じることが、スポーツ医学を学びたいという思いに繋がっています。
また、Early Decisionで11月初旬に受験し、合格した場合は必ず入学するというルールの下、第一志望校として受験しました。そして12月中旬に合格通知を受け取りました。
Universityの学生は、真面目で情熱を持った人が多く、学ぶ意欲が非常に高いのが特徴です。特に、自分の専門分野に対して深い興味を持っている人が多く見られます。また、個性的な人も多く、多様な価値観が尊重されています。
実際にRice大学に行ってみて良かったと感じる点を教えてください。
受け入れ態勢は非常に整っていて、オリエンテーションも充実しています。全員が大学生活で取り残されることがないよう、初めからしっかりとしたシステムが整備されています。たくさんのアイスブレーカーイベントが開催されて、新入生は「O-week family」と呼ばれるグループに分けられます。このグループには約4人の上級生と新入生10人程度が一緒に活動することで、最初の週に友達を作りやすい環境が提供されるんです。また、戻って来られる居場所が確保されている点も、大きな魅力だと思います。
さらに、入学してみて本当に良かったと感じるのは、周りに刺激的で、心優しい人々が多いことです。Rice Universityでは「Culture of Care」というフレーズがよく使われているのですが、これは例えば、課題に苦労している学生や、インターンを受けている学生、あるいはパーティーで少し飲みすぎてしまったり、何か困難に直面している学生がいたら、必ず誰かが手を差し伸べて助けてくれる、という文化を指しています。誰一人として取り残されないように、みんなが協力し合う環境があるのは本当に素晴らしいことだと感じます。みんな、とても勉強熱心で、学業に対するプライドも高いのですが、それでも助けを求めれば、必ず応えてくれるし、お互いを全力で応援し合う「Culture of Care」を体現している人たちが多いのが印象的です。
逆に、悪かった点、もっとこうだったらよかったと思う点はありますか?
現在住んでいる寮は少し古くて、建物の脆さが気になるところです。僕自身は特に困ったことはないのですが、ゴキブリが出た部屋もあるそうです。また、食堂のシステムに関しては、1日3.5食分の費用を支払う必要があって、経済的な負担が大きいと感じています。
特に留学生は、ビザ申請などの理由で現地の学生に比べて金銭的な負担が多い場面があると思います。さらに、事務とのコミュニケーションも円滑ではなく、反応や返信が遅いことがあるので、金銭面に限らず、留学生としてさまざまな場面でハードルを感じることが多いと考えています。
大学の授業のスタイルについて教えてください
授業は基本的に、大人数で1人の教授の講義を聞く「レクチャー」がベースになっています。クラスの規模は授業によって異なりますが、多くても100人以下と比較的コンパクトなサイズです。教室の雰囲気は高校に近く、教授との距離が非常に近いので、学生は積極的に質問したり意見を交換したりする機会が多いのが特徴です。
さらに、「Lab」と呼ばれる実習ベースの授業では、教授やTA(Teaching Assistant)がいる中で、課題に取り組む形式もあります。また、少人数の「レクチャー」では、ディスカッションが中心になる「セミナー」のような形式の授業になることもあり、学生同士や教授との対話が活発です。
キャンパスや大学の施設の雰囲気はいかがですか?
キャンパス内には充実した勉強スペースが整っていて、一部の寮にはジムも併設されています。また、「レクリエーショナルセンター」という施設には、ジムや体育館、プールなどが揃っていて、学生のレクリエーション活動を支える環境が整っています。建物は全体的にきれいで、寮や学生が運営するカフェなど、学生が集まるためのスペースもたくさん用意されています。
学校外での生活環境はいかがですか?
Residential Collegeによって、学生が居住できる年数が異なりますが、基本的には大学生活の4年間のうち少なくとも1年間はキャンパス外に住むことが一般的です。また、1年生は必ずResidential Collegeに居住するというルールがあります。
車がなければ生活がかなり難しく、僕自身も現在は車を持っていないため、不便を感じることが多いです。公共交通機関はあまり発達しておらず、利用者は主に車を持つ余裕がない学生やホームレスの方々が多いので、少し安全面で不安を感じることもあります。テキサス州自体が非常に広大で、日本の面積の約1.8倍もあります。州内だけでも12時間以上運転できるほど広いのですが、ヒューストンは街とは言っても東京に比べるとずっとコンパクトです。スーパーとしてはウォールマートが代表的で、少し郊外に行くと二階建ての建物はほとんど見かけませんし、駐車場も平地が広がっています。高速道路は片側6車線もあったり、とにかく何もかもが大きくて広いのが特徴です。
テキサス州は、安全性を疑う声もありますが、自己防衛をしっかりしていれば問題ないと思いますし、キャンパス内は基本的に安全です。
大学の勉強以外で行っている課外活動について教えてください
運動部のマーケティング部門で、インターンとして写真を撮影しています。最近では動画の撮影も担当するようになり、直近では「感謝祭」のイベントで男子バスケ部と一緒にバハマ諸島に行く予定です。その週末には他のスポーツの試合も重なっているので、バハマには僕一人で行くことになり、写真や動画の全てを任されるという責任感と同時に、信頼されていると感じています。
また、日本語の授業でティーチングアシスタントを務めており、生徒が授業外で会話練習をしたい場合にパートナーとして付き合ったり、課題や宿題の添削を手伝ったりしています。これは、日本人が英会話レッスンを受ける感覚に近いものです。
さらに、アカペラサークルにも所属していて、今年からは音響などを担当しています。今度のコンサートでは、ライブ配信や会場の音響を担当し、アーカイブ配信とは別で後日YouTubeにアップロードする動画の編集なども手掛けています。近々コンサートがあるので、現在はライブ配信の準備やリンクの作成に取り組んでいます。
在学中に印象に残ってるイベントはありますか?
「Beer Bike」という、カレッジ間の対抗イベントがとても印象に残っています。約10人ほどのチームが構成され、水を早飲みするメンバーと自転車で走るメンバーに分かれます。水を早飲みし、バイクで2周するというのを交互に繰り返し、全員が先に終わらせたチームが勝つというリレー戦です。チームは男子、女子、卒業生で編成され、その週は「Beer Bike」というメインイベントだけでなく、さまざまなイベントも開催されます。
また、「Moody Fest」という音楽フェスティバルも行われ、ダンスグループや僕自身も出演しましたが、アカペラグループがパフォーマンスを披露し、プロのアーティストも参加します。このフェスティバルでは、豪華なステージやセットが用意され、フードトラックも出店しているので、とても楽しめるイベントです。
入学前、準備しておいてよかったこと、または準備しておくべきだったことはありますか?
準備しておいて良かった点として挙げられるのは、高校2年生の夏までにCommon AppのエッセイとRice Universityへのエッセイをすべてドラフト段階まで準備しておけたことです。このおかげで、十分な時間をかけてじっくり取り組むことができました。
一方で、もっと早い段階からビザの申請や奨学金制度についてリサーチし、検討する時間を確保しておけばよかったと感じています。
大学での日本人コミュニティについて教えてください
大学内の日本人の人口は少なく、正規留学生は全体で約3〜4人ほどです。また、交換留学生も年間に1人程度しかいません。
その中で、Japanese Clubというサークルのようなコミュニティが存在していて、月に1回、日本の食文化や芸術に触れるイベントを開催したり、日本人学生が交流できるイベントを定期的に行っています。このクラブは年々活動規模を広げています。
最後に、これから留学を志す中高生の方々にメッセージ・アドバイスをお願いします!
出願後など、自分ではどうしようもない場面もあると思うので、あまり抱え込まないでくださいね!僕自身もそうでしたが、海外経験がない方は不安を感じることが多いかもしれません。ただ、結果的にアメリカに留学してよかったと感じているので、海外大学への受験を考えている方は、躊躇わずに頑張ってください!